『パークライフ』吉田修一/文藝春秋社/410円(税込)
どうしてこの小説を読むと、こんな気持ちになるのだろう。なんだか気持ちがいい。誰もが一度は感じたことがあるような気まずさや他力本願なわくわく感、やるせなさの感情が描かれているからだろうか?職場や学校と家を行き来するだけのような毎日。思っていたよりも日々というものは簡単に過ぎる。それでもなにか楽しい変化が起こるじゃないかという微かな期待はもってしまう。だからといって自分がなにか特別なことをしたりするわけでもないのに。積極的に求めなければなにも変えられないのはわかっている。でもそうはなれない。一人でいることに慣れていく。それでも誰かとつながっていたい。街を歩けば、何百、何千人という人とすれ違う。言葉を交わすことも無く過ぎ去っていく人波に揉まれても寂しいとも思わない。そんな暮らしの中で、通勤の駅のホームや、毎日通う公園のいつもの顔ぶれ。近いようで、遠い距離感。それでも、そのつながっているのか、つながっていないかの関係に小さな安らぎを感じているのではないだろうか?日比谷公園を舞台に展開する平凡な日々。別居中の夫婦の家で、猿の世話をしながら過ごす主人公は、下鉄の車内でのちょっぴり気まずい勘違いによってある女性と出会う。彼女はいつも池の上のベンチに座って、スターバックスの「カフェモカ」を飲んでいる。二人は日比谷公園で再会する。誰にでも起こり得る、まるで自分が毎日体験していることのように錯覚してしまう「日常」。今日だって、なにかが起こることを、期待しているような、していないような。 text by Naobaby
]]>Book Review 『ランドマーク』http://bunntami.exblog.jp/1071084/2005-06-24T17:14:00+09:002005-06-24T18:16:09+09:002005-06-24T16:58:48+09:00bunntami創刊第2号/2005年6月発刊吉田修一 講談社 1,470円(税込)
誰だって、希望のかけらくらいはもっている。いつかは夢を叶えたいとか、自分の思いのままにしたいとか。大人になって膨らんでくるのは、嫌でも見せつけられてしまう様々な現実。このまま何も変わらずに過ぎてしまいそうな毎日。「o-miyaスパイラル」の建設に携わる男たち。それぞれの生活と感情。日常とはどこかいびつな異常さにみちている。そのいびつさはきしみ、留め金のネジを弛め、いつか壊れてしまいそうな気さえする。 都会的な感性で吉田修一が描く、むせかえるほど「人間の香り」が心を打つ物語。
text by Naobaby]]>Book Review 『パレード』http://bunntami.exblog.jp/1071101/2005-06-24T17:13:00+09:002005-06-24T18:14:19+09:002005-06-24T16:59:38+09:00bunntami創刊第2号/2005年6月発刊吉田修一 幻冬舎 文庫/560円(税込)
普段、誰にでも起こりえるような日常的な風景の中で繰り広げられる出来事を、吉田修一だからこそ描ける独特な展開で物 てから全体を振り返ってみるとなんとも言えない感慨深い気持ちになる。吉田修一ワールドと普段の自分自身の日常を比べてみてはいかがでしょうか?きっとおもしろい発見となんともいえない気持ちになるかもしれませんよ!!
text by 恵奈
]]>Book Review 『最後の息子』http://bunntami.exblog.jp/1071108/2005-06-24T17:12:00+09:002005-06-24T18:12:48+09:002005-06-24T17:00:43+09:00bunntami創刊第2号/2005年6月発刊吉田修一 文藝春秋社 文庫/530円(税込)
人間の優しさ、そして脆さ。日常では見落としてしまいそうな、そう、私達の周りに当たり前のようにあるのに、どうしても掴み切れない風景、それを彩る言葉達がここに収められた三つの短編にぎっしり詰まっています。 とくに「Water」という短編の中で、バスの運転手が主人公に言う言葉は、今の私にはとても痛く、責められているようにさえ感じました。 「坊主、今から十年後にお前が戻りたくなる場所は、きっとこのバスの中ぞ!ようく見回して覚えておけ。坊主達は今、将来戻りたくなる場所におるとぞ」 あなたは今、その場所を覚えているでしょうか?
text by 宮崎 ]]>June.2005 Vol.1 連載小説 『空がたかくて青いから』http://bunntami.exblog.jp/1071127/2005-06-24T17:11:00+09:002005-06-24T18:07:38+09:002005-06-24T17:03:40+09:00bunntami創刊第2号/2005年6月発刊
text by庵うるふ ]]>June.2005 Vol.2 リレー小説 無名寓話 第弐話 「焦燥感」http://bunntami.exblog.jp/1071134/2005-06-24T17:10:00+09:002005-06-24T18:09:15+09:002005-06-24T17:04:53+09:00bunntami創刊第2号/2005年6月発刊
頭には先程見た夢がこびり付いて離れないでいる。まどろみから立ち直ろうと煙草に火をつけたミキオは,まだぼんやりとした目で時刻を知り、大学に行くのを止すことに決めた。ふと気付くと下着姿の女がこちらを見据えて立っている。一瞬ぎょっとしたが、 すぐ我に帰る。確か名前は………
クラブで泥酔いしたゆえの行きずりのこと、思い出せるはずもない。きっと、この女もそうなのだろう。シャワーを浴びていたらしく、髪を拭いたり爪をいじったり、こちらに話し掛けようともしてこない。 ミキオは話かけるのを諦めて、パソコンの電源を入れた。メールを開いてみたが、来ているのは迷惑メールばかり。再びベットに倒れ込み、脇に転がっていた雑誌をしばらくパラパラとやってみるが、すぐにまた放り投げる。 目を瞑り、暗闇と静寂が訪れるのを待つ-遠くに小さい子供の泣き声が聞こえる。このまま、このまま、闇が体を包んでいってくれればいいのに……。「…ぇ…ねぇってば。聞いてるの?火、貸してよ」少しヒステリックな女の呼び掛けに狼狽しながら、慌ててライターを放る。「ありがと」。カチッカチッ。女は無表情に煙草に火をつける。狼狽したのは、突然話し掛けられたからだけではない。女の顔が、何だか、初めて付き合った女の顔に似ていたからだ。あいつの名前は死んでも忘れそうにないな、とミキオは思った。反吐が出そうだ。ふと、この女を無茶苦茶にしてやりたいという衝動にかられる……否、正確に言えば、世界に終わりがくればいい。そう、ミキオは思った。女は、ミキオの感情の変化になど全く気付かずに、満足そうに、紫煙を吐き出している。スクリーンの光に照らされた部屋の中は、雑然としていて、燥焦感を煽る。そうだ。あいつに会いに行こう。少しはマシな気分になれるかもしれない。 ミキオはまだ、足下に引かれた赤黒い絨毯が、彼を導くように延びていっていることに気付いてはいなかった。
text by Marbou]]>June.2005 Vol.2 文学の奥底 「メタモルフォーゼの示すもの」http://bunntami.exblog.jp/1071147/2005-06-24T17:09:00+09:002005-06-24T18:07:06+09:002005-06-24T17:06:33+09:00bunntami創刊第2号/2005年6月発刊『変身』 カフカ著/高橋義孝訳 新潮文庫
『変身』は夭折の天才作家、フランツ・カフカ(1883-1924)の言わずと知れた代表作だ。いわゆるメタモルフォーゼ(変形)を主題にした作品で、ある朝男が目を覚ますと、自分が巨大な“ムカデ”に「変身」していた、という物語である。各国の神話や昔話にもこの手の「変身譚」はよくあるのだが、『変身』には他の「変身譚」には感じられない、奇異な感じを受ける。そこにこの作品の、未だ解き明かされない謎が潜んでいる。その奇異な感じとは、ムカデとなったグレゴール・ザムザに対する、その両親や妹などの反応から滲みでている。普通ならば、驚愕・恐怖し許容ならざる事態と思うはずが、それを両親や妹は当然のごとく受け入れる。さらに周囲の関心は、本当にそのムカデがグレゴールであるか、ということに移ってゆくのである。グレゴールは、貧しい家計を支えるために懸命に働いていた。そんなグレゴールが“ムカデ”になることが「当然」であるとされ、それは「必然」であるかのように思われてくる。そして作品中、この「メタモルフォーゼ」の原因が、一言も語られることはなく、日常が繰り広げられてゆく。この「メタモルフォーゼ」の示すものは何なのか。謎は深まるばかりである。
text by 真司
]]>June.2005 Vol.2 ハイカラ活動写真館 〜速くはならない、でも楽しくなるよ〜http://bunntami.exblog.jp/1071190/2005-06-24T17:08:00+09:002005-06-24T18:11:10+09:002005-06-24T17:13:36+09:00bunntami創刊第2号/2005年6月発刊映画「深呼吸の必要」 2004年 監督:篠原哲雄 キャスト:香里奈/谷原章介
成宮寛貴ほか人は様々なものを抱えている。様々な過去を抱えて生きている。派手な栄光かもしれないし、地味な悲しみかもしれない。それでもなんとか生きている。「そんなボク ら」の物語。沖縄の小さな島。毎年春の一ヶ月、日本各地からサトウキビの収穫の仕事をしに若者達がやってくる。中途半端な興味で参加した者、何かを忘れたくて、現実逃避で やってくる者と様々だ。痛みを抱えてやってきた人々を、沖縄の壮大な自然と、おじぃ、おばぁのあたたかい愛情が包む。やがて、心を開き合う彼ら。心を一つにしてサトウキビを刈る。痛みをもっているから、誰か他人の痛みだってきっとわかる。なんだってうまくいったり、すぐによくなったり、そんな魔法みたいなものはないかもしれない。「なくなったら、またはじめからやり直せばいい」おじぃの言葉がしみる。深呼吸によっ て、何かがかわるなんていえないかもしれない。でもそれがなにかのきっかけだったり、それで楽しくなれたりするなら、、。沖縄の青い海とそこで成長していく若者の繊細で微妙な心境の変化を描いた心温 まる作品。きっと観た後に、さわやかな清涼感と、深呼吸のようなリラックス感が残るはず。 「速くはならない、でも楽しくなるよー」
text by Naobaby ]]>June.2005 Vol.1 Poem de Poem♪http://bunntami.exblog.jp/1071155/2005-06-24T17:07:48+09:002005-06-24T18:05:23+09:002005-06-24T17:08:09+09:00bunntami創刊第2号/2005年6月発刊
text by hitomin]]>June.2005 Vol.1 Bunntami Girls ーある晴れた朝に見かけた100%の女の子ーhttp://bunntami.exblog.jp/1071174/2005-06-24T17:06:00+09:002005-06-24T18:05:06+09:002005-06-24T17:11:40+09:00bunntami創刊第2号/2005年6月発刊
1983年生まれ
福生市在住
身近な出来事を題材にして小説を書いてみたいかも。
]]>Book Review 「大きな石に背中から落ちて、私は死んだ…」http://bunntami.exblog.jp/1071200/2005-06-24T17:05:00+09:002005-06-24T18:04:44+09:002005-06-24T17:15:01+09:00bunntami創刊第2号/2005年6月発刊『夏と花火と私の死体』 乙一著 集英社 文庫/440円(税込)
「私」は目とか耳とか口とか鼻とか、いろんな穴から血を流して死にました。大好きな人が、茣蓙で包んでくれたけど、ちょっとはみ出た泥まみれの素足が恥ずかしい…。夏休み、小さな村で小さな死体ができました。“五月ちゃん”(死体)をめぐって、弥生ちゃんと健くんは、恐ろしくもエロティックな「お遊戯」を開始する——。人間は、「死」というものに無関心ではいられません。それはそこに、何かを感じ、何かを求めるからではないでしょうか。そして、もしそれがある種の“エロス”だったのなら…。子供たちの姿を通して「死」と「エロス」の関係を鋭く描いた、本格ホラーミステリーです。この妖艶な作品を弱冠17歳で書き上げた奇才、乙一。珠玉のデビュー作をぜひご覧ください。
text by 真司]]>Book Review 「トケチャウ」http://bunntami.exblog.jp/1071210/2005-06-24T17:04:00+09:002005-06-24T18:02:24+09:002005-06-24T17:16:19+09:00bunntami創刊第2号/2005年6月発刊『ウサニ』 野島伸司 幻冬舎 文庫/1470円(税込)
「真実の愛」とはいったいなんだろう?存在するのだろうか?野島伸司の『世紀末の詩』を見て以来、ずっと考えてしまう。野島伸司は、その作品の中で様々な形をとって愛とはなにかということをボクたちになげかけ、そして追求している。ひょんなことから「イチゴの精霊」の入ったうさぎのぬいぐるみ「ウサニ」に思いをよせられる主人公。彼らのやりとりから見えてくる本当の愛のかたちとは…。切なくも、かわいらしい「真実の愛」の物語。『未成年』『世紀末の詩』など数々の名作を生み出してきた野島伸司の書き下ろし小説。現在放送中のドラマ『あいくるしい』の中にもたくさんでてくる著者独特のいいまわしや、野島伸司の愛の世界がたっぷり味わえる。
text by Naobaby]]>Book Review 「普通の恋とは何なのか…」http://bunntami.exblog.jp/1071216/2005-06-24T17:03:00+09:002005-06-24T18:03:01+09:002005-06-24T17:17:14+09:00bunntami創刊第2号/2005年6月発刊『夜明けまで1マイル』 村山由佳著 集英社 文庫/500円(税込)
20歳にしていまだに男性経験も少なく、すぐ感情的になってしまう恋愛下手な女の子、うさぎ。彼女は付き合った男の子や本当に好きな男の子には「もっと女らしくしろ」だの「オトコ女」と言われてしまう。自分が自分らしくいたいと願う反面、それではなかなか意中の男の子に理解されず悩む日々、、、一方、憧れの先生と深い中になってしまった涯は、どんどん先生にのめり込んでいく。そんなある日、男の子にふられたうさぎをなぐさめているうちに彼女の素直の気持ちにほのかに思いを寄せるようになる。しかし、2人の間にあるこの思いは恋人との間に出来る感情でもなく2人にしかわからない幼馴染であるがゆえにおこる恋に似た淡い思いであった。恋をしてだめでもけっしてめげず、ひたむきで一生懸命な青春ストーリーです!!
text by 恵奈]]>https://www.excite.co.jp/https://www.exblog.jp/https://ssl2.excite.co.jp/